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「Fateは哲学」なのに哲学者サーヴァントが少ない理由あるいは現代思想業界では聖杯戦争が繰り広げられている

 一つ前のエントリーはあまりに暗かった。マジメに考え過ぎたので、観光客気分でもっといい加減なことを書く。この「観光客」というのも東浩紀さんの哲学のキーワードなのだけれど、本エントリではマジメなことは考えない。

ラノベっぽくなるかな? と思って、主張をそのままタイトルに据えてみた。これである。

〈「Fateは哲学」なのに哲学者サーヴァントが少ない理由あるいは現代思想業界では聖杯戦争が繰り広げられている〉

さて、みなさんは「Fateは哲学」という言葉を聞いたことがあるだろうか? なかったらググって欲しい。ごめん、ググったら「Fateは文学」だった[1]。でも『這いよれ!スーパーニャル子ちゃんタイム Vol. 2』でクー子が「運命(フェイト)は哲学もある……」と言っている[2]ので、ここでは「Fateは哲学」という主張していきたい。

「「Fate」って何?」っていう人は、どこから入ってもらうのがいいだろうか? 常に話題が供給されるからソシャゲ『Fate/Grand Order』だろうか? いやいや、やはり最初の『Fate/Stay Night』から……とは実は言えない(ここ伏線)。「Fate/Stay Night Heaven's Feel」まだわかってない……。コミックで追いかけていたら映画に追い抜かれたよ……。映画見に行ってないよ……。

話を「「Fate」は哲学」に戻す。これはただクー子が言っているだけではない。『Fate/Grand Order』のイベント「徳川廻天迷宮 大奥」(通称「大奥イベント」)を思い出して欲しい。最近(二ヶ月前)に復刻されたばかりなので、ここまで読んでいるマスターはみなプレイしたことと思う。注目すべきは終幕のここだ(このためにマテリアル再読してスクショ撮った)。

そう、Fateの戦闘は概念のマウント合戦なのである。具体的にどのような戦闘が繰り広げられるかはここでは繰り返さない。

この概念のマウント合戦、実は現代思想業界で日夜繰り広げられている戦いの在り方でもある。事実、『新記号論』ではジークムント・フロイトのマスターは敵対サーヴァントであるジャック・ラカンについて、このような会話を繰り広げている。

「なぜでしょうね。これを読むとラカンはまちがっている、と言わざるをえない」

「明確にまちがっていますね。無意識は物表象の世界なのに、それを語表象の世界と考えていた。語表象と物表象を混同している」

「まちがっています。ラカンは「意識は言語によって構造化されている」あるいは「前意識は言語のように構造化されている」と言うべきだった。フロイトに聞けばラカンはまちがっていると言ったと思う。ただ、ラカニアン(誤った引用註:ジャック・ラカンのマスター)たちがこの話を聴いたら、「ラカンの言語はそういうものじゃない」と答えると思うんですよね(後略)」

(中略)

「ラカンの言語は、物表象も含んでいて、もっと広い概念なんだとかね。「ララング」とか言うと思います」

「とはいえ、どれだけ「言語」の定義を拡大したとしても(中略)無意識を言語的記号の集積として捉えることには無理がある」

マスターならおわかりいただけるだろう。これはどう見ても聖杯戦争に備えるマスターとその仲間の会話だ。想定敵対サーヴァントであるジャック・ラカンの「言語」概念に穴を確定させるための分析としか思えない。

ここにも着目だ。

フロイトを神経学者としてよみがえらせ、スピノザを現代に召還する。

英霊召喚の話である。最もよく知られる一九〇〇~一九一〇年頃のジークムント・フロイトではなく、一九二〇~一九三〇年頃のいわゆる「後期フロイト」を別クラスとして召喚し、それを呼び水にスピノザを召喚すると言っているのだ。

ここまでで、「Fateは哲学」であり、「現代思想業界で聖杯戦争が繰り広げられていること」はご納得いただけたことと思う。ここから「Fateに哲学者サーヴァントが少ない理由」を引き出すことは容易である。

現在の哲学者も哲学者サーヴァントは今も聖杯戦争を戦い続けているため、時計塔が秘匿しているのである。辛うじて『氷室の天地』にプラトンとディオゲネスのみがネタめいて登場したのは、おそらくこの2騎の英霊が概念マウント合戦の結果として人類史には残りつつ座から消えてしまったため、秘匿が解除されたものと私は踏んでいる。私からは以上だ。言うべきことは言った。あとは魔術協会が嗅ぎつけるまえに姿を隠さなけr(エントリはここで途切れている)[3]。


[1] Fateは文学とは (フェイトハブンガクとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

[2] p.18参照。ちなみにその前の「「クラフト」は人生」は、「Fateは文学」に続く「クラナドは人生」とクトゥルー神話の生みの親であるH.P. ラブクラフトをかけたネタである。なお『Fate/Grand Order』第二部のど真ん中にクトゥルー神話が持ち込まれているので、クトゥルー神話にもぜひ触れて欲しい。

[3] 伏線が回収されていないじゃないか!と思ったか。ここでするぞ。Fateファンの間ではしばしば原典の扱いが問題になるが、現代思想では非常に原典が重視されることを言っておきたい。実際『新記号論』ではフロイトの『夢解釈』のある図がドイツ語版全集、英語版標準版、日本語版全文集でいずれも一致しないことから、ドイツ語版初版に遡り結局どれでもないことを確認。そこを糸口に新たな解釈を引き出しているぞ!


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