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いっせっせーの - 数字を一つ思い浮かべろ

『数字を一つ思い浮かべろ』を読んだ。

主人公デイヴ・ガーニーは元警察。すでに引退して妻と二人で暮らしている。事件は彼のところに大学時代のクラスメイトから手紙が届くところから始まる。自分なら不意に届いた知人からの手紙なんて気持ち悪くて捨ててしまいそうだけれど、彼は事件の相談とあっては捨て置けず、わざわざクラスメイトを訪れる。

こうして引退してからも自ら犯罪捜査に関わっていくデイヴを、もちろん妻マデリンは快く思わない。心配する様子を見せたり、苛立ちを露わにしたり、放っておいたり、と落ち着かない。デイヴ自身もときに自問して自己疑念に囚われたりする。それでいて、あるいはそれだからこそ、捜査に集中する。捜査以外を視界から外してしまう。

似たような面倒臭さには自分もよく悩まされて、そのうえいつまでも悩んでいていいのだろうか? とメタ悩みまで発生させてしまうくらいなのだけれど、デイヴの術会を読んでいると、諦観だか達観だかの念が湧く。引退後の警察官まで悩んでいるのだから、つきあい続けることになるのだろう、と。

ミステリィを読んだにしては珍しく、謎解き要素ではなくガーニー夫妻の関係に目が向いたのは、数字当てのトリックの答えを知っていたから。ネタバレしていたわけではなく、数学か統計の読み物で読んでいた。それじゃないといいなと思っていたのでそこが残念。

こういうこともあるだろう。それでも楽しめたのは前述のとおり。

ところで本作といい、『ミスター・メルセデス』といい、〈バック・シャッツ〉シリーズといい、たまに翻訳ミステリィを読むと主人公が引退後の警官というのは偶然なんだろうか。それともアメリカでは読者層の高齢化が進んでいるのだろうか。文化庁の『平成 25 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』を見ると、日本では60代以上の年齢層は60代未満より一ヶ月に1冊も本を読まない比率が多いようだけれど(視力の衰えもあるか)。

さらに余談。数字当てというと「いっせっせーの」を思い出す。いろいろとかけ声のバリエーションがあって、調べるとおもしろい。中にはまじめに答えずネタじゃないかというようなレベルのものもあったが。自分が実際にやったことがあるのだと、「んー」がタイミングの駆け引きも発生しておもしろかった。ものっそい短く言って指をあげさせないのを狙ったり。

脱線がはなはだしいのでこのあたりで。

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