『BLAME! THE ANTHOLOGY』を読んだ。
映画ではなく原作漫画からの中短篇集。収録されているのは次の5篇。
内容紹介では次のようにノベライズとなっている。
けれど、実態はスピンアウトに近い。早川書房編集部による「まえがき」にも、次の但し書きが付いている。
自分は映画は観たけれど原作漫画はほとんど読んでいないので、原作と映画の違いなのか原作と小説の違いなのか、ハッキリしないことがしばしば。それが幸か不幸かは難しい。原作への思い入れが強いと、違いが気になってスピンアウトが受け入れにくくなったりする。
ではそれぞれ簡単に感想を。
「はぐれ者のブルー」は、描写を映画に寄せてくれているとのことで、自分のような読者にはありがたかった。階層都市の一風景が、丁寧に切り取られている印象。映画のような大きな事件は起きないけれど、でも平穏な日常というには環境は厳しくて、でも生きるためだけに生きていない男の物語。切ない。
「破綻円盤 ―Disc Crash―」は、「検温者」の物語(これは小説独自の設定かな?)。作中の物理的な視点は、基本的に一定なんだけれど、俯瞰的なイメージを喚起させてくれるのが楽しい。さらに、その俯瞰視点をダイナミックに揺さぶってくる。短さが濃さにつながっていて、ジェットコースターのよう。
「乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-」は、「著者の言葉」(言葉?)が真の目的では? という疑惑に包まれる。著者が著者なので。短篇集の一作品として短篇集が出てくるくらいの覚悟をしていたので、ちょっと物足りない(毒されている気がしてきた)。
「堕天の塔」は、舞台設定だけでもうとても魅力的。階層都市の中にあって階層都市から切り離された塔が舞台。階層都市から切り離されているのに、階層都市の広がりを感じられる。折れた塔は、階層都市を、落ち続けている。舞台設定だけでなく、「着地」も美しかった。
「射線」は、「乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-」とは別ベクトルにはっちゃけている。階層都市を描いているのだけれど、階層都市であって階層都市でない感じ。著者の言葉でも、「設定を大きく拡張している」「ふつうの意味では「小説」といいがたいこの乱暴なシノプシス」なんて描かれている(シノプシスは、あらすじ、梗概の意)。自分にはちょっとついていけなくて、置いてけぼりをくった感触。
以上、5篇。どれも階層都市を描いているのだけれど、それぞれの景色があった。壮観。
映画ではなく原作漫画からの中短篇集。収録されているのは次の5篇。
- 九岡 望「はぐれ者のブルー」
- 小川一水「破綻円盤 ―Disc Crash―」
- 野崎まど「乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-」
- 酉島伝法「堕天の塔」
- 飛 浩隆「射線」
内容紹介では次のようにノベライズとなっている。
無限に増殖する巨大階層都市を舞台に、探索者・霧亥(キリイ)の孤独な旅路を描いたSFコミックの金字塔、弐瓶勉『BLAME!』を、日本SFを牽引する作家陣がノベライズ。
引用元: BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA) | 九岡望, 小川一水, 野崎まど, 酉島伝法, 飛浩隆, 弐瓶勉 |本 | 通販 | Amazon
けれど、実態はスピンアウトに近い。早川書房編集部による「まえがき」にも、次の但し書きが付いている。
※小説で描かれている内容のすべてが公式設定というわけではありません。
引用元: 『BLAME! THE ANTHOLOGY』「まえがき」
自分は映画は観たけれど原作漫画はほとんど読んでいないので、原作と映画の違いなのか原作と小説の違いなのか、ハッキリしないことがしばしば。それが幸か不幸かは難しい。原作への思い入れが強いと、違いが気になってスピンアウトが受け入れにくくなったりする。
ではそれぞれ簡単に感想を。
■
「はぐれ者のブルー」は、描写を映画に寄せてくれているとのことで、自分のような読者にはありがたかった。階層都市の一風景が、丁寧に切り取られている印象。映画のような大きな事件は起きないけれど、でも平穏な日常というには環境は厳しくて、でも生きるためだけに生きていない男の物語。切ない。
■
「破綻円盤 ―Disc Crash―」は、「検温者」の物語(これは小説独自の設定かな?)。作中の物理的な視点は、基本的に一定なんだけれど、俯瞰的なイメージを喚起させてくれるのが楽しい。さらに、その俯瞰視点をダイナミックに揺さぶってくる。短さが濃さにつながっていて、ジェットコースターのよう。
■
「乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-」は、「著者の言葉」(言葉?)が真の目的では? という疑惑に包まれる。著者が著者なので。短篇集の一作品として短篇集が出てくるくらいの覚悟をしていたので、ちょっと物足りない(毒されている気がしてきた)。
■
「堕天の塔」は、舞台設定だけでもうとても魅力的。階層都市の中にあって階層都市から切り離された塔が舞台。階層都市から切り離されているのに、階層都市の広がりを感じられる。折れた塔は、階層都市を、落ち続けている。舞台設定だけでなく、「着地」も美しかった。
■
「射線」は、「乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-」とは別ベクトルにはっちゃけている。階層都市を描いているのだけれど、階層都市であって階層都市でない感じ。著者の言葉でも、「設定を大きく拡張している」「ふつうの意味では「小説」といいがたいこの乱暴なシノプシス」なんて描かれている(シノプシスは、あらすじ、梗概の意)。自分にはちょっとついていけなくて、置いてけぼりをくった感触。
■
以上、5篇。どれも階層都市を描いているのだけれど、それぞれの景色があった。壮観。