「今年読んだ本は256冊だった」 「ちょうど2 8 冊ですね」 「キリがよい」 「内訳は以下のとおりです。6年数え続けて単調増加していますが、率直な疑問として暇なんですか?」 小説 :120 読書 :23 新書 :13 漫画 :100 「体感的にはむしろ読む時間が減っていると思っていたので、この結果は自分としても理解に苦しむ。これまでは比較的短時間で読める漫画が下駄になっていたと説明できるけれど、今年は小説が増えているから謎は深まるばかり」 「新書も多めですしね」 「ね」 「概観するにはこれくらいにして、印象的だった本を振り返ってみましょうか」 「振り返ってみたら〈来歴〉、〈伝承〉、〈継承〉、〈後継〉とかそんな言葉で形容される関心が浮き上がってきたので、それに添って」 「うわ、硬い」 「そんな大した話ではないよ」 「はあ」 ◆ 「まず挙げるのは小説 〈名探偵の証明〉 シリーズ。老いた名探偵・屋敷啓次郎と、その名探偵に憧れてついには名探偵となった少女・蜜柑花子の物語。外形的には探偵小説だったけれど、描かれているのは英雄叙事詩だった」 「蜜柑さんに入れ込んでいましたね」 「こんなに人のよい名探偵、珍しいと思う。名探偵って、だいたいどこか浮世離れしたキャラクタとして描かれるよね」 「TVドラマ『SHERLOCK』のホームズさんなんかそうでしたね」 「ホームズを演じるベネディクト・カンバーバッチは 『ドクター・ストレンジ』 でも天才を演じていたっけ。これも2017年公開か」 「 『マイティ・ソー バトルロイヤル』 にも出ていましたね」 ◆ 「次は読書カテゴリから 『ゲンロン0 観光客の哲学』 と 『アーカイヴの病』 。そもそもこの軸が浮かび上がったのはこの2冊に依るところが大きい。『ゲンロン0』は家族――親子の話だったし、『アーカイヴの病』は何をアーカイヴとして継承していくかという話だった」 「『アーカイヴの病』は再読したんですよね」 「うん。 『MOTサテライト 2017秋 むすぶ風景』 で記憶に関連するインスタレーションを観ていたら、こうして想起された記憶も、その記憶を想起させた作品も、やがてロストしてしまうと思うと儚くなってしまって」 「双司君、ぼちぼちメモ魔ですしね」 「メモする割には読み返さない」 「それ