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12月, 2017の投稿を表示しています

2017年に読んだ本(とか観た映画とか聴いた音楽とか)

「今年読んだ本は256冊だった」 「ちょうど2 8 冊ですね」 「キリがよい」 「内訳は以下のとおりです。6年数え続けて単調増加していますが、率直な疑問として暇なんですか?」 小説 :120 読書 :23 新書 :13 漫画 :100 「体感的にはむしろ読む時間が減っていると思っていたので、この結果は自分としても理解に苦しむ。これまでは比較的短時間で読める漫画が下駄になっていたと説明できるけれど、今年は小説が増えているから謎は深まるばかり」 「新書も多めですしね」 「ね」 「概観するにはこれくらいにして、印象的だった本を振り返ってみましょうか」 「振り返ってみたら〈来歴〉、〈伝承〉、〈継承〉、〈後継〉とかそんな言葉で形容される関心が浮き上がってきたので、それに添って」 「うわ、硬い」 「そんな大した話ではないよ」 「はあ」 ◆ 「まず挙げるのは小説 〈名探偵の証明〉 シリーズ。老いた名探偵・屋敷啓次郎と、その名探偵に憧れてついには名探偵となった少女・蜜柑花子の物語。外形的には探偵小説だったけれど、描かれているのは英雄叙事詩だった」 「蜜柑さんに入れ込んでいましたね」 「こんなに人のよい名探偵、珍しいと思う。名探偵って、だいたいどこか浮世離れしたキャラクタとして描かれるよね」 「TVドラマ『SHERLOCK』のホームズさんなんかそうでしたね」 「ホームズを演じるベネディクト・カンバーバッチは 『ドクター・ストレンジ』 でも天才を演じていたっけ。これも2017年公開か」 「 『マイティ・ソー バトルロイヤル』 にも出ていましたね」 ◆ 「次は読書カテゴリから 『ゲンロン0 観光客の哲学』 と 『アーカイヴの病』 。そもそもこの軸が浮かび上がったのはこの2冊に依るところが大きい。『ゲンロン0』は家族――親子の話だったし、『アーカイヴの病』は何をアーカイヴとして継承していくかという話だった」 「『アーカイヴの病』は再読したんですよね」 「うん。 『MOTサテライト 2017秋 むすぶ風景』 で記憶に関連するインスタレーションを観ていたら、こうして想起された記憶も、その記憶を想起させた作品も、やがてロストしてしまうと思うと儚くなってしまって」 「双司君、ぼちぼちメモ魔ですしね」 「メモする割には読み返さない」 「それ

ヘイヘイホー - モアナと伝説の海

『モアナと伝説の海』を観た。 待機作には古代の南太平洋を舞台にしたディズニー映画『Moana』(16年北米公開予定)のオリジナル脚本を手がけることが決まっている。 引用元: 映画『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』オフィシャルサイト|全国大ヒット上映中! とあったから、タイカ・ワイティティ脚本かと思っていたら、そうじゃないのね。 Thor director Taika Waititi talks about his original Moana screenplay を読むと、ドラフトは書いたみたい。 『マイティ・ソー:バトルロイヤル』 の監督決定との前後関係どうだったんだろ? ディズニー内と言えばディズニー内の話だけれど。要らない詮索か。 派手なところだとクライマックスの神話めいた雰囲気がよかった。ちょっとだけもののけ姫を思い出す。 地味なところだとモアナの祖母が印象的。いいおばあちゃんだ。 あと七面鳥のヘイヘイ。特に物語上の役割があるわけでもないのに、あの存在感。存在感しかないと言っても過言ではない。

流れ剥がれかくあれば - ぼくの死体をよろしくたのむ

『ぼくの死体をよろしくたのむ』を読んだ。 たまたま見かけてタイトルに惹かれて。意味からは退廃的な印象を受けるけれど、「ぼく」も「よろしく」も「たのむ」もひらがなで書かれた字面が与える印象は軽い。 内容はどちらかというと後者の印象に近かった。少し奇妙でどこか愛おしい18の短篇が収録されている。起伏が少なく分かりやすいオチもないけれど、独特な雰囲気が妙にしっくりきてするすると読めた。あまり読まないタイプの作風だったけれど、こういうのもよいな。 次の一節がお気に入り。 ほんとうは、時代に逆行、とか、反対に、時代に添う、とかいうことも、わたしはどうでもいいのだ。だいいち、「時代」っていうものが、よくわからない。何がはやっているとか、何がどこにあるとか、何がかっこいいとか、いろんなことが目の前を流れてゆくけれど、どれも私からは少し遠いものだ。 (好物じゃないネタの回転寿司のお皿が流れ去る、みたいな感じだな) 目を背けるほど嫌いじゃないけれど、だからと言って手を出すほど欲求も湧かなくて、ただなんとなく目で追ってしまう。そんな感じ。

果樹か自由化 - ジョジョリオン17

『ジョジョリオン17』を読んだ。 この巻はほぼ戦闘回だった。東方定助、広瀬康穂それから豆銑礼を襲う敵が、ようやく姿を現すところから始まり、倒したあたりでもう残り十数ページ。次の敵が東方常敏に接触したところで次巻に続く。 豆銑礼のスタンド・ドギースタイルのアクションがおもしろい。第7部『スティール・ボール・ラン』に登場したマウンテン・ティムのスタンド・オー! ロンサム・ミーを彷彿とさせる。 次の敵も第7部の登場人物を想像させる。時計を持っていて〈果樹園〉を封鎖するというので、リンゴォ・ロードアゲインのことを思い出さずにはいられない。

無貌の素顔 - ゴールデンカムイ12

表紙のインカㇻマッが艶っぽい。 しかし、内容は男臭い。男だけでラッコ鍋を食べるし(アイヌの言い伝えでは、ラッコの煮える匂いは欲情を刺激するらしい)、温泉回の見開きはもちろん男湯だし。 そういう絵面の話はさておき、物語のうえではのっぺらぼうを巡ってのインカㇻマッとキロランケの対立が気になるところ。 そして、のっぺらぼうはそもそも何者なのか。ミステリィだと入れ替わっているのが定番だけれど。

Self-Reference Eminem / EMINEM - Revival

Eminemの9枚目のスタジオアルバム "Revival"を聴いている。 "Encore"後、入院を経て"Relapse"で復活して、"Recovery"で歌い始めたと思ったら、"The Marshall Mothers LP2"で原点回帰して、そしてこの"Revival"。 よい。非常によい。いろいろ書いているけれど、単純に聴いていてかっこいい。そうでなければ、こんなにしっかりと耳を傾けたりもしなければ、歌詞について調べて書いたりもしない。 というわけで、あとは自分向けの覚書の域を出ない。 一聴してすんなり入ってくるのは、"Relapse"以前も含めて、これまでの要素があちこちに散りばめられているからだと思う。 1曲目の"Walk on Water feat. Beyonce"は"Monster feat. Rhianna"と同じくポップスターとコラボしていてキャッチーだし、"Remind Me"は"Berzerk"のようなオールドスクールスタイルだし、"Offended"は"The Real Slim Shady"や"Without Me", "Rap God"を彷彿とさせる畳み掛け具合だし、"In Your Head"はイントロが"Stan"に近いものを感じる。"Untouchable"は、曲調は違えどテーマは"White America"と通底していると思う (この曲に限らず、色々な曲で人種について言及しているけれど)。 最後の"Untouchable"は先行リリースされたから1曲リピートしていたから気がついたのだけれど、"'Capped in America' like Steve Rogers 'Cause no one oversees these cops"のくだりが、明に暗にアメコミを連想

島のmercy - 進撃の巨人 24

『進撃の巨人 24』を読んだ。引き続きマーレ編。 どこに着地するんだろう? このままダラダラと続いたら嫌だな。 そんな心配はまったくの杞憂だった。最後の衝撃の1コマが。こういう形で本線と合流するとは。 ところで、22,23巻の感想を書き漏らしていることに気がついた。改めて書こうかと思ったけれど、今更か。どうせ読み返して書くなら、マーレ編が終わったタイミングで21巻から読み返して書きたい。

fool, cool, tool - 勉強の哲学 来たるべきバカのために

『勉強の哲学 来たるべきバカのために』を読んだ。 📙 ここでいう〈勉強〉とは、 あるノリから、いままでに比べてノリが悪くなってしまう段階を通って、「新しいノリ」に変身する こと。〈ノリ〉は、 環境のコードに習慣的・中毒的に合わせてしまっている状態 を指している。 自分のざっくりとした理解では、空気を読めている状態。もう少しフォーマルな環境なら、TPOに合わせているといったところか。 📙 その〈勉強〉をするためには、言語偏重になる必要があると説いている。環境ごとに固有の言葉や独特の意味を持つ言葉があり、その用法に無自覚に従い続けていると、その環境から離れられない。だから、新しいノリに変身するには、言語の用法に自覚的にならないといけない、という話。本書では、言語に対するこのような捉え方を説明するにあたって、哲学者ヴィトゲンシュタインの〈言語ゲーム〉という考え方が参照されている。 この捉え方が自分にもすんなり入って来たのは、国語辞書編纂者の著書 『辞書を編む』 の影響か。それから、言葉を足がかりにしてノリを移動するという話なので、 『弱いつながり 検索ワードを探す旅』 を連想する。その著者である東浩紀さんは、 僕の世代の大学院生にとって、東さんは憧れのモデルだったと思います。 引用元: 気鋭の哲学者・千葉雅也の東大講義録 #1「勉強とは何か」 | 文春オンライン とのことなので、無関係ではないのかな? 『弱いつながり 検索ワードを探す旅』でも、 だからこそ、自分を変えるためには、環境を変えるしかない。人間は環境に抵抗することはできない。環境を改変することもできない。だとすれば環境を変える=移動するしかない。 引用元: 『弱いつながり 検索ワードを探す旅』 という話だし。 📙 ここからは〈勉強〉から脱線して、本書ではあまり触れられない〈練習〉について少し。筋トレや美術の話があるにも関わらず、ほとんど触れられていないということは、きっと意図的にオミットされているのだろう。そう推測しているのだけれど、あえて。つまり、いくら言語を駆使して勉強しても、練習なくして実践はできないのでは?、という話。 筋トレだと生理学的な問題も絡むし、美術――でも自分の体験を語れないので、趣味の落描きレベルの話ではあるけれど。 それでも、言語では掬いきれ

縒り糸 - KUBO/クボ 二本の弦の秘密

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(原題 "Kubo and the Two Strings")を観てきた。 『コララインとボタンの魔女』 のアニメーション制作映画ライカの、ストップモーションアニメ作品。ライカは、同じくストップモーションアニメ作品の、『ティム・バートンのコープスブライド』の制作にも携わっている。 ストップモーションアニメというのは、雑にいうと人形を使ったパラパラ漫画。わずかに人形を動かしながら撮影した静止画像で、動画を作り上げる手法。独特の動きや質感が大の好み。多用される手法ではないので、ストップモーションアニメの新作が観られるというだけでもう嬉しい。 というわけで、まずはストップモーションアニメとしての側面の感想を言う。最高だった。躍動感に溢れるアクションが繰り広げたり、かと思えば人形とは思えないほど繊細な表情を浮かべたり、と目が離せない。冒頭、海上のシーンの水の表現や、その後の砂浜のシーンの砂粒とか堪らない。背景にCGも併用しているとのことだけれど、まったく違和感がなかった。 脚本も、ずっとシンプルに見えていたのに、最後にメタ構造が示されてハッとさせられた。そのため、主人公クボに二重に感情移入させられる。物語の縦糸が2本縒り合わさっていたことに気付かされる。 音楽も素敵だし、好きなところだらけの1本だった。

羽根ムーン - 掟上今日子の婚姻届

『掟上今日子の婚姻届』を読んだ。 冤罪体質の厄介が語る冤罪論がおもしろかった。それにしても、濡れ衣を着せられたうえに、それを晴らしたら晴らしたで、別の理由で疎ましがられるとか、不幸にもほどがないだろうか。逆転裁判シリーズの矢張も大概だけれど、彼も相当だ。 それから、事件解決のためのズルを使った今日子さんが可愛らしい。しかし、その方法が方法だけに、『旅行記』を読んだ時の疑問が再び浮かび上がってくる。今日子さんは、自らの手で書いたメモをどれだけ信じているのだろうか。 もっと言えば、自分が探偵だとどれだけ信じているのだろうか。

彼岸の - 境界線上のホライゾン X <中>

『境界線上のホライゾンX 』を読んだ。 この巻は熱かった。前巻からの流れで武蔵と十本槍がついに相対。さらには、安土と武蔵の対艦戦まで。 次巻へのヒキも強力。これまでで最大の窮地だけれど、やっぱり王様は 不可能男 ( インポッシブル ) だけれど、みんなでなんとかしちゃうんだろうなあと謎の安心もありつつ、やはり先が気になる。 ところで、表紙のナイちゃんとガッちゃんのペアが素敵。いつも表紙を飾るのは一人だけだったけれど、彼女達はやっぱり二人一緒じゃないと。

刀ガール - 血界戦線 Back 2 Back 4

『血界戦線 Back 2 Back 4』を読んだ。 収録されているのは、 Angry Young Merman ザップ・レンフロ因果応報中!! V・次元血統 の3編。 「V・次元血統」が特に好み。前巻で登場した次元怪盗ヴェネーノが佩いていた次元刀にまつわるエピソード。娘ヴェネランダが登場する。彼女もかっこいいけれど、会計士ゴードンも渋くてよい。二人のこの後も、どこかで描かれたりしないかな。あと、空間編成術者モキートがちらりと出るのもいい味。 以下は覚書。 「アグニの角質」の「アグニ」はインド神話に登場する火の神。足の裏から削り取っているのだろうか……。 FDHLはおそらく"The Fire Department of the City of Hellsalem's Lot"の略。ヘルサレムズロット市消防局のこと。 ルシアナが食べていたメガファッジサンデーのファッジは、砂糖とバターを牛乳に溶かして冷やし固めたお菓子。すごく甘そう。 ツェッドが注文していたカイピリーニャは、カシャッサ(サトウキビの蒸留酒)ベースのカクテル。レシピを見るとこれも甘そう。 ゴードンがテイクアウト内容について。バブラデュゴバーガーは『Back 2 Backじゃない方の)『血界戦線』1話冒頭で、レオも注文していた。見た目は甲虫に似ているが美味しいのだろうか。メガアダムスキーピザのアダムスキーは、UFOの分類にも名前が使われているジョージ・アダムスキーからか?

何に乗っているのか - Fate/strange fake (1) ~ (4)

『Fate/strange fake』の既巻4冊をまとめ読み。漫画版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』を読んでからと思っていたから、本棚にしまい込んでいたのだけれど、漫画がまだしばらく続きそうなので。 (1)の表紙に描かれている英雄王をはじめ、既存サーヴァントが登場するのもうれしいけれど、本作が初出となるサーヴァントも負けていない。とくにライダーがおもしろい。シリーズ展開に伴って、いろいろなサーヴァントが登場しているけれど、このライダーはありなのか。いや、こうして登場しているのだから是非もないか。 それはそれとして、〈バッカーノ!〉シリーズの続きはいつになるのかな。先月発売予定だったのが、延期になったみたいだけれど。 2017年11月に刊行を予定しておりました電撃文庫『バッカーノ!1935-E The Buzz Messengers』は、製作上の都合により発売が延期となりました。お待ちいただいております読者の皆様には、深くお詫び申し上げます。 引用元: 新刊/既刊情報|電撃文庫公式サイト

Celebrate with Serenity - 静謐のハサン from Fate/Grand Order

「先月あたりから『Fate/Grand Order』を始めました」 「ときどき育成状況なんかをツイートしていますね」 「うん。今は、イベント〈冥界のクリスマス〉で育成素材集め中」 「イベントクエストで概念礼装〈メリー・シープ〉が落ちないって嘆いていましたね。あのあとどうなったんですか?」 「運良く2つも拾えたよ。しかし、あのイラストはあざとい」 「靴下を編むのに、どうして自分の着ているのから糸を取っているんですかね。あざといというか不自然というか……」 「鶴の恩返しみたいな?」 「だとしても、全身に毒がある静謐さんの着衣が材料にしちゃったら、危険では?」 「マ、マスターには毒耐性の加護のあるし!! ともあれ、拾えたので記念に描いてみた」 「クリスマスまでに靴下を編み終えられるか気掛かりなあまり、戦闘中に暗器ではなくて編み針を実体化させてしまった静謐のハサンさん」 「シチュエーションが面倒くs――細かいですね」 「言い直せてないよね?」

秘す自筆 - 掟上今日子の旅行記

『掟上今日子の旅行記』を読んだ。 寝たら記憶がリセットされる今日子さんが旅行だなんて!? とワクワクさせてくれるタイトル。内容も、おもしろいところはおもしろかった。特に、今回の犯人が狙っているもの。あと、今日子さんの自分の過去に対するスタンスも、素敵だった。 しかし、ひとつ大きな疑問というか欲求不満が。今回の件があったのなら、なぜ自分が探偵なのか? そもそも本当に探偵なのか? という方向に推理をはたらかせそうなものだけれど、そちらの方向に話が全然いかなかったこと。 たとえ忘却している過去に興味がなくても、謎を解決するのに網羅的にアプローチする今日子さんのことだから考えそうなものだけれど。

come together - ジャスティス・リーグ

『ジャスティス・リーグ』(原題 "Justice League")を観てきた。 DCエクステンデッド・ユニバース (DCEU)の5作品目。これまでに公開されたのは次の4作。 『マン・オブ・スティール』 『バットマン vs スーパーマン』 『スーサイド・スクワッド』 『ワンダーウーマン』 本作から、新たに3人のヒーロー――フラッシュ、アクアマン、サイボーグが本格的に登場する。 フラッシュが、場を和ませるよいムードメーカーの役割を果たしていて、親しみを感じさせてくれる。TVドラマシリーズで、どんなキャラクタか知っていたのも影響しているだろう。『バットマン vs スーパーマン』で、何の前触れもなく出てきて驚いたのを思い出す。 映画から入っているので、アクアマンとサイボーグは唐突感が否めなかった。一応、『バットマン vs スーパーマン』で作中の映像としては登場するのだけれど。特にアクアマン。サイボーグは、キーアイテム・マザーボックスとの関係があるから分かるけれど、彼が仲間入りした動機がいまいち一貫性がなかったような。 と言うのも、最初は協力を拒んでいたけれど、彼の種族が保管していたマザーボックスが奪われたを契機に仲間入り。だったら、責任感から戦っているのかと思ったら、ワンダーウーマンに使われた真実の投げ縄の力で、全然違うことを喋り出すし。そんな風に思うようになる過程も、さして描写されていなかったような。 DCEUの次回作は『アクアマン』だから、そこで印象が変わるかな?

一刻の治国 - マギ シンドバッドの冒険(16)

『マギ シンドバッドの冒険(16)』を読んだ。本編が完結して、こちらも佳境。ついに念願が叶い、シンドリア王国の建国にこぎ着けるのだけれど……。 セレンディーネの思い切った行動が印象的。愛憎相半ばするが故だろうか。皇女だからこその責任や愛国心もあるだろうから、自分が思い及ぶ範囲にはない気もする。 彼女のこの選択は、シンドバッドに決定的な影響を与えているように思う。そう思うのは、シンドバッドはまだ黒ルフを受け入れていないから。彼が黒ルフを受け入れ、この時点ではセレンディーネが従えるゼパルの能力を、後に本編で紅玉に使ったのは、彼女のこの選択が引き金なんじゃないだろか。なんてことを思う。 ということを考えていると、バルバロッサの存在感が相対的に薄くなっていく。でも、キッカケを作ったのがセレンディーネとは言え、直接の非道を行うのはバルバロッサなので複雑。

神のいぬ間の選択 - マギ(37)[完]

『マギ(37)』を読んだ。これにて完結。 この巻だけに関して言えば悪くなかった。最終章に入ってからここに至るまでが、自分にはついていけなくて悪い意味で超展開だったのだけれど。 完結巻ということで、どんな話だったっけかざっと振り返ってみた。 1~2巻 アラジン、アリババ、モルジアナが出合って、迷宮 (ダンジョン) 攻略。アリババがジン・アモンに選ばれる。そのあとバラバラに。 3~8巻 3人が合流してバルバッド編。アル・サーメンの存在が明るみに出る。合流するまでにアラジンと煌帝国の白瑛が出合う (3巻)。紅玉、ジュダルの登場もこの時期。 9~12巻 一行はシンドリアへ。そこでアラジンがマギとして、アリババに力を貸す宣言をする (9巻)。白龍登場。アラジン、アリババ、モルジアナといっしょにザガンの迷宮へ。迷宮攻略後、再びアル・サーメンと対峙。撃退後、アラジンはマグノシュタットを、モルジアナは故郷を目指す。アリババは悩み中。白龍も帰国。紅覇、紅名、紅炎の顔見せ (12巻)。 13~15巻 シンドバッドが紅玉との模擬戦でゼパルの能力を使う(13巻)。アリババはレームへ行くことへ。一緒に出発するも、解散する前に海賊に襲われる。ここで白龍の目的が母・玉艶の殺害と判明。レームのアリババ、ユナンの元を訪れたモルジアナ、煌帝国に帰国した白龍のエピソードを挟み、マグノシュタット編開始。 16~20巻 マグノシュタット編。端折ると、世界統一を目指す煌帝国が攻めてきたが、マグノシュタットの反撃手段が、アル・サーメンに仕組まれていたためイル・イラーを降臨させかねない事態に。両国が協力、アラジンも駆けつけ、シンドバッドも介入。一緒にモルジアナとも再会。最終的に、アラジンがソロモンの知恵を使い、イル・イラー降臨の依り代となっていたマグノシュタット学長たちのルフを還して、事態が収束する。 21~24巻 アリババがバルバッドの状況を見て煌帝国・紅炎に、紅玉にゼパルを仕込んでいることを知りシンドバッドに相容れないところがあると知る。そしてアルマトラン編突入。紅炎が協力の見返りに、アラジンからアルマトランの秘密を聞き出す形で始まる。結果的には、ダビデが意図的に息子ソロモンに負ける。ソロモンが世界の法則を変えた代わりに人間性を失う。ソロモンの妻であり、マギの一人でもあるシバが采配を奮う

知識と致死 - 怖い絵展

上野の森美術館に行って、 『怖い絵展』 を観てきた。 書籍 『恐い絵』 発行から10周年を記念しての開催というわけで、著者が監修に参加している。 開催に寄せた言葉によると、絵の鑑賞に背景知識は不要という考え方へのアンチテーゼとして企画したらしい。つまり、背景知識がある方が、より楽しめるという話。『珈琲の世界史』の「はじめに」でも同じようなことが書かれていたっけ。 歴史を知っているのと知らないのとでは、コーヒーのおいしさの感じ方が違ってくるのです! 引用元: コーヒーはいつから「ウンチク」を語りたくなる飲み物になったのか(旦部 幸博) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) 話を戻すと、「知識があると楽しめる」のはその通りだと思いつつ、その考えは「知識がないと楽しめない」に転じかねない。そうならないよう気をつけたい。あまり考えすぎると、感覚がマスクされる。味覚の場合、ジャムの味について考え過ぎるとかえってわからなくなるという話が、 『錯覚の科学』 であった。そうでなくても、「知識がないと楽しめない」と思う人が増えると、「初心者お断りの空気」ができあがって、間口が狭くなってしまう。 最初は知識がない状態からスタートするのだから、そこに引け目を感じる必要はなく楽しめばいいのだけれど、かといって何も知ろうとしないままでは広がりがない。そういう話か。 実際、ほとんど知識がなくても魅入られるときは魅入られる。本展の目玉『レディ・ジェーン・グレイの処刑』がまさにそうだった。人の列から離れてしばらく眺め続けてしまった。そこから解説を読んで、さらに想像を膨らませたりもするのだけれど、それはその後の話で、どちらの状態がよりよいということもないだろう。 ちなみに 当日の感想ツイートはこちら 。ここ数日タイムラインでストロングゼロの話題を見かけて、『ビール街』と『ジン横町』の絵のことをまたぞろ思い出す。

sink, think, 真空 - 日本沈没 決定版

『日本沈没 完全版』を読んだ。 自分には情報量過多で消化不良だけれど、それなりに感想を。 本作自体と『マイティ・ソー:バトルロイヤル』のネタバレを含むので、構わない方だけ続きをどうぞ。 続きを読む 本作は、ざっくり言うと未曾有の大地震で日本が沈没する話。いわゆる災害パニックものと同じシチュエーション。でも、最大の災害が起こるまでが丁寧に描かれていたり群像劇だったりするので、一線を画しているように思う。 次の共通点から『シン・ゴジラ』と対比している感想を見かけてさもありなんと思う。 どちらも描かれているのが日本崩壊の危機。 その危機に対するのが、個ではなく組織。 本作の映画版も『シン・ゴジラ』も樋口真嗣監督の作品。 でも、自分が連想したは『マイティ・ソー:バトルロイヤル』だったりする。 というのも、本作で最重要視されているのが〈国民〉なのに対して、『シン・ゴジラ』では〈領土〉あるいは〈主権〉に重心があったように見えたからだ。これは『マイティ・ソー:バトルロイヤル』でソーが下した決断と同じだ。彼は、領土アスガルドから力を得て国民を鏖殺せんとするヘラへの対策として、アスガルドを憎むスルトを復活させて領土もろともにヘラを滅ぼすことを選ぶ。そして、国民とともにアスガルドをあとにする。 どちらが正しいという問題ではない。結果的に、どちらが正しかったかという議論は発生するだろうけれど、決断の段階でどちらが正しいか知る術はない。日本はすぐにでも沈没するかもしれないし、ずっと存在しているかもしれない。ゴジラが現れたらヤシオリ作戦で無力化できるかもしれないし、できないかもしれない。スルトを復活させなくても、ヘラを止められたかもしれない。 八割方うまくいく作戦が三つ続けてうまくいく確率は五分五分だよね? (0.8^3 = 0.512) と考えたうえで、五分五分ならきっとダメだと主観的かつ悲観的な思考に流れがちなので、本作に出てくるようなバイタリティを感じられる人に憧れる。

come good - 血界戦線 グッド・アズ・グッド・マン

『血界戦線 グッド・アズ・グッド・マン』を読んだ。 『 オンリー・ア・ペイパームーン 』に続き、ノベライズ第2弾。今回、スポットが当たるのは堕落王フェムト。 …全く… これだから「普通」は嫌いなんだ!! 引用元: 『血界戦線 1』 「Chapter-3 カタストロフシティ」 と叫ぶ彼が、その「普通」コンプレックスをこじらせる話だった。 彼のことだからもちろん拗らせ方がおかしい。そんなわけで表紙イラストのようなことになるわけだけれど、詳しくは読んでみてのお楽しみ。 余談だけれど、堕落王フェムトといえば『血界戦線 8』に収録されている「王様のレストランの王様」も印象的。あのときだけは、頼もしく見えてしまった。 毎回、有無を言わせずゲームに参加させても、有無を言わせず破滅をもたらしたりはしないあたり、彼なりの哲学があるのだろうなあ。