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ヴァイオリン・ハザード - ヴァイオリン職人の推理と探求

『ヴァイオリン職人の推理と探求』を読んだ。タイトルから予想できるとおり、ヴァイオリン職人が主人公のミステリィ。

老境に差し掛かっている主人公の醸し出す雰囲気が堪らない。清濁併せ呑まざるを得ない諦観とかシニカルさとか亡き親友の孫への暖かい視線とか。個人的には次の述懐がお気に入り。

「ヴェネツィアでは、静けさは金で買うものなの」

ところで、この作品ではヴァイオリンが重要な役割を担っており、ヴァイオリニストの名前もたくさん出てくる。自分の気がついた範囲だけれど、少なくとも次の11人は名前が挙がっていた。
  • デルファン・アラール
  • ヨーゼフ・ヨアヒム
  • ハイフェッツ
  • パガニーニ
  • アイザック・スターン
  • アルテュール・グリュミオー
  • レオニード・コーガン
  • サルヴァトーレ・アッカルド
  • イツァーク・パールマン
  • メニューイン
  • オイストラフ

辛うじてパガニーニの名前を聞いたことがある気がかすかにしないでもないので、良い機会だと思ってSpotifyで聴いてみたりしている。クラシックについての教養はサッパリだけれど、存外と退屈しないで聴けて楽しい。うっとりする。

そのパガニーニは、続編『ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密』の天才演奏家としてテーマになっているようだし、こちらも読まねば。

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