「『宇宙クリケット大戦争』を読んだよ」
「『銀河ヒッチハイク・ガイド』、『宇宙の果てのレストラン』に続く3作目ですね」
「今回も面白かった。アーサーが素敵過ぎる」
湿った空気のなか、アーサーはぜいぜいあえぎながら横たわって、どこかけがをしていないかと身体をまさぐってみた。どこを触っても痛い。だがやがて、これは手が痛いからだと気がついた。どうやら手首をくじいたらしい。
「最初に気がつくところじゃないんですか!?」
「最初に手を動かした時に痛いだろうにね。でも、アーサーなら気づかないかもしれないと思っちゃう。ずっとこんな調子なもんで」
「つくづく涙を誘いますね」
「うーん、かわいそうではないよ。変わっているとは思うけれど」
(ときどき自分みたいに思うことがあるし)