「静けさってなんだろうね」
「辞書的な意味では音がしていないことですよね」
「静けさを象徴するような音もあるよなぁ、とふと思って。松尾芭蕉の『閑さや岩にしみ入る蝉の声』で詠まれているみたいに」
「それを言えば、そもそも全くの音がない環境なんてまずありません。黙っていたって生活音がします」
「そんなに静かな環境だったら、自分が立てる音が気になって、かえって気が散っちゃうかもね」
「そう言えば、双司君は作業しているときはだいたいヘッドホンしていますよね」
「うん。周りの不規則な音が入ってこない方が、集中しやすい気がして。でも、面白いことに集中できると、再生が停まっていても気がつかないことがある」
「ヘッドホンじゃなくて耳栓でもいいんじゃないですか?」
「うーん、よく分からない。集中できるまでは音楽があった方がいいような気がする。わざわざ実験したことはないけれど」
「あんまり考え込まない方がいいんじゃないですか? 集中できる、と信じられる習慣があれば、それで」
「そう言えば、スポーツ前の準備体操って、そういう意味もあるような。しっかりやると、今日は動ける、って思える」
「そういうメリットもあるかもしれませんね」