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No 才能

雑誌『COURRiER Japon 2011年 10月号』を読んだ。

今月号の特集『すべては「心理」が決めていた』は前から関心があった分野だから、面白く読めた。
特に面白かったのは、『成功する人に共通する「才能」よりも重要な「心理的な特徴」とは』。

「才能」は、過大評価されている。
先日読んだ『錯覚の科学』(感想)では、「可能性の錯覚」と表現している。

より重要だというその特徴は、「根性 (grit)」だそうだ。
最初、この単語から精神論を想像したけれど、もちろんそうではない。
重要なのは、長期間に渡る継続的な努力だ。

「1万時間の法則」を思い出す。
これは。プロフェッショナルになるには、1万時間に渡る方向性を持った練習が必要だという主張だ。
1年365日毎日4時間練習しても、1万時間に達するには2500日≒8年かかる。
これだけの継続は、「やればできる」類のものではない。

実際、この法則を広めたマルコム・グラッドウェルはインタビュー成功は、1万時間の努力がもたらす:日経ビジネスオンラインでこんな風に答えている。
一つは、「集中して1万時間練習する必要がある」と知ることと、実際に実行することは別であること。1万時間の核心は、それが非常に長いことだ。1万時間の練習を積むためには、10年間はかかるだろう。excellence(卓越)に達するために10年間自分をコミットさせるのは、非常に気が遠くなるようなことである。
これはこれで一つの才能だと思う。

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