「『未完少女ラヴクラフト』を読んだよ。表紙にやられて」
「どう見ても創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』ですね」
「でも、読んでみたら意外や意外。ネタに振りきった表紙とは対称的に、異世界を訪れた少年が少女と旅をするという冒険ファンタジーの王道を進んでいたよ」
「でもでも、クリーチャーは名状しがたい身の毛もよだつようなのばかりだったんでしょう?」
「それはもう!!」
「目を輝かせないで下さい……」
「クトゥルー神話だけじゃなくて、世界各地の神話や伝承が参照されていたよ。後註でまとめて解説してくれている親切設計」
「それは確かに読者に優しいですね」
「でも、それらのクリーチャーに負けず劣らず、主人公のカンナやヒロインのラヴを含めた味方の面々も大概だったり」
「表紙にもいらっしゃいますね。禍々しいのが」
「そこが良いんだよ」