「『亜人(デミ)ちゃんは語りたい』を読んだよ。これタイトルは『ツァラトゥストラはこう語った』を参照しているのかね」
「ツァラトゥストラ=超人ですから、そうかもしれませんね」
「そういう堅い背景の有無はともかく、亜人――吸血鬼とかデュラハンとか雪女とかサキュバスとか――の日常生活にフォーカスしているって点で、『現代神話』に似ている。Amazonのカスタマーレビューにあるとおり」
「『竜の学校は山の上』に収録されている作品ですね」
「うん、ファンタジーが日常化しているところが似ている。反対に、世界の命運を握るくらいのスケールだと、〈X-Men〉シリーズの人間とミュータントの対立になるのかね」
「そういう作品でも個人の問題も描かれていましたよね。ローグさんなんてまさに人間とミュータントの間で揺れ動いてましたし」
「あー、この漫画の作中世界はそんなシリアスじゃないから気楽だよなぁ」
「亜人に対する権利が確立されている様子ですよね」
「うん、政治的にはそんな感じ。でも、本人を含めて個人の意識としては被差別・差別意識は払底していない感じだけれど」
「その手の意識は根強いでしょうしね」
「漫画として読んでいるとほのぼのしている感さえあるけれど、本人にとってしてみたら切実なんだろうなぁ」
「それはそうです。口にした人には些細な言葉でも、耳にした人には刺さるものですよ」
「特殊能力者が迫害されるのは、よく描かれるよね。『マギ』のマグノシュタット編とか」
「反対に何でもないのがコンプレックスになる『僕のヒーローアカデミア』なんて例もありますよ」
「って考えると、どっちが多数派なのかってだけなんかね」
「そういう堅い話はさておき、みんなかわいいですよねー」
「色々と大変だったろうに、屈折せず屈託無くよく高校生まで来たよなぁ、と思う。亜人の存在以上のファンタジーじゃ……なんて思ったり思わなかったり」
「堅い!! 暗い!! 重い!! こうしてかわいいんだからいいじゃないですか!!」