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Killing All

『ジャッキー・コーガン』(原題: "Killing Them Softly") を観た。

悪人が出てきては死んでいく様が『アウトレイジ』シリーズを彷彿とさせる。でも、殺し屋ジャッキー・コーガンはあくまでドライ。ヤクザが金だけじゃなくて筋を通すのに拘るのとは対称的。エンディングシーンでの一言が、彼のビジネスライクな性格を象徴している。

でも、テーマはそこじゃない。そもそもジャッキーは映画開始からしばらく出てこない。ブッシュ大統領やオバマ大統領の演説がところどころで使われていたから、政治的なメッセージがあるんだろうな、と思いながら観ていた。そう考えると、ジャッキーの最後の一言は風刺なんだろうな、と思う。でも、背景知識が不足していたからどうもスッキリしない。

家に帰ってから、「町山智浩さんによる『ジャッキー・コーガン』ちょっとだけ解説」を読んで、少し合点がいった。しかし、70年代の原作小説を下敷きに、2008年のサブプライムローン問題批判を乗せるってまたアクロバティックなことを。

というわけで、なかなかつかみ所がない映画。編集や演出にも、それが表れていると思う。下世話な会話を延々と聞かされる一方で、ジャッキーの最初の殺人シーンだけ明らかに浮くレベルの演出が施されていたりする。会話と言えば、ジャッキーとミッキーがバーで会話をしているシーンに編集ミスがあったように思う。飲み干したはずのビールが復活していたり、グラスの数がおかしかったりした。

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