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5月, 2016の投稿を表示しています

ヒーローはいらっしゃいませんか - アイアムアヒーロー

「『アイアムアヒーロー』を観てきたよ」 「邦画を映画館で観るのは久し振りですね」 「だね。『龍三と七人の子分たち』以来だから約1年振りだ」 「ゾンビ映画ゾンビ映画していましたね」 「うん。生前の行動を形式的に繰り返すところなんか、かなり気持ち悪くてよかった。主人公・英雄が最初から銃を持っているのに、なかなか引き金を引かないのには、ヤキモキさせられたけれど」 「でも、それがあってこそのクライマックスじゃありませんか?」 「あのシーン、比呂美ちゃんが活躍すると思ったんだけれどなぁ」 「そうしたら英雄さんが霞んで、ピントがぼけちゃいますよ」 「それもそうか。緊迫感が薄れちゃいそうだもんな」

鋼の正義と鋼のスーツ - シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (原題: Captain America: Civil War)』を観てきた。 アイアンマンもアントマンもスパイダーマンも出てくるから目移りするけれど、主役はあくまでキャプテン・アメリカ。 『ザ・ファースト・アベンジャー』でアメリカ軍という組織の一員となり、『ウィンター・ソルジャー』でS.H.I.E.L.D.という組織の崩壊を目の当たりにし、この『シビル・ウォー』でついにアベンジャーズという組織と決裂する。 アベンジャーズを率いるのはアイアンマンことトニー・スターク。印象的には彼の方が組織を軽んじそうではあるけれど、よくよく考えたら大企業の社長だった。良きにつけ悪しきにつけ大きな力を発揮する組織という存在を身をもって知っているはず。 あるいは、超人血清のおかげで我が身一つで戦えるスティーブと、スーツというバックアップあってこそのトニーという対比もあるかもしれない。 というシリアスな話なんだけれど、空港での両陣営の戦いには単純にテンションが上がった。アントマンとスパイダーマンがいい意味で軽かったおかげか。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に参加していないからこその役回りだろう。そのうえ、二人とも独特なアクションが楽しいし。

偏見の変遷 - ズートピア

『ズートピア (原題: "Zootopia")』を観てきた。いい意味で期待を裏切られた。 擬人化された動物が仲よく暮らす都市の物語と聞いて抱いていた、人畜無害 (人は出てこないけれど) な話だろう、という偏見が見事に打ち砕かれた。 主人公はウサギのジュディ。幼い頃からの夢を実現させて、小動物には向かない職業 = 警官に就く。相棒はキツネのニック。幼い頃の素直さを打ち砕かれた皮肉屋の詐欺師。警官と詐欺師のバディものというわけで『ホワイトカラー』を連想する。 二人ともとても魅力的だし、ストーリィの密度も高いし、単純に映像を観ていても楽しいし、ズートピア社会の構造は想像しがいがあるし、ガゼル (シャキーラ) の歌"Try Everything"もパワフルでセクシーだし、見所しかない。 いろいろと思うところがあって、観てからもう2週間になるのだけれど、いまだに消化しきれない。偏見や差別という重いテーマを扱っているにかかわらず、ナマケモノに持っていかれてしまう。フラッシュ美味し過ぎる。 と考えていてはたと気がつく。偏見と笑いは存外近しい。

connected

This work by SO_C is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License . 「辿りたくなる」 「点字ブロックのところは止めてください」

tunnel

This work by SO_C is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License . 「トンネルみたい」 「無闇にくぐりたくなりますね」

かけがえがなくなる - 僕だけがいない街 8

「『僕だけがいない街8』を読んだよ」 「ついに完結ですね」 「7巻でじれったい思いをさせられただけに、緊張感とそこからの開放感もひとしお」 「完結した今、振り返ってみてどうですか?」 「やっぱり7巻はおさらいだったと改めて思う。悟だけが繰り返した時間を、彼だけがいない時間を過ぎた後の、みんなが集まる今に繋ぐのに必要な」

まちまちな町 - それでも町は廻っている 15

「『それでも町は廻っている 15』を読んだよ」 「修学旅行、雪子ちゃんの初恋?、紺先輩の引っ越しとイベント盛りだくさんでしたね」 「紺先輩がことあるごとに誤解されていて、コニー・ウィリス作品を思い出す」 「クールに見えて、思い込み激しいですよね」 「あとはタッツンがおいしかったな。眼鏡をなくしたり、涼ちんとやりあったり」 「巻を重ねてきてみなさんのいろいろな側面が見えてきていますよね」 「相対的に歩鳥がだんだん普通に見えてきた。不思議」

prost! - 神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶

『神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶』を読んだ。 サブタイトルにあるとおり、今回の鍵は〈記憶〉。記憶喪失患者を巡る物語。 キーパーソンが記憶喪失患者なのは、神酒クリニックには天久翼がいるからだろう。相手の考えを読み取れてしまうから、こうでもしないと隠し事が成立しない。 そう考えると、天久翼のこの能力、依頼者は犯人ではないというメタ推理の材料になっているよなぁ。うーん、自分の嘘を事実と信じ切っているパターンもあるか。 何はともあれ、今回も神酒が楽しそうでなによりだ。

乾坤一冊 - 倫敦千夜一夜物語 あなたの一冊、お貸しします。

『倫敦千夜一夜物語 あなたの一冊、お貸しします。』を読んだ。 舞台は19世紀末の倫敦。登場するのは仲睦まじい兄妹。両親を失った二人が営むのは貸本屋。訪れるのは相談事を抱えた兄の学友。 短篇連作ミステリィで解決のキーになるのが本ということで〈ビブリア古書堂の事件手帖〉シリーズを連想する。だけど違った味わいがあってこちらも素敵だ。 いわゆる日常ミステリィの範疇かと思いきや、背後で策謀が渦巻いてる模様。 続き が楽しみ。Kindle化されたら読もう。

the bamboo scooper - 竹林の小径、野宮神社、大河内山荘庭園

「ゴールデンウィークに京都に行って、竹林の小径を歩いてきたよ」 「素敵な雰囲気」 「実際に歩いていると、人が多いからこんな落ち着いた雰囲気じゃないけれどな」 「わざわざ言わなくても……」 「途中にある野宮神社のじゅうたん苔」 「新雪みたいですね」 「え、そう?」 「柔らそうで、足跡を残したくなるところが」 「入っちゃあかんやろ」 「想像するだけですよ」 「竹林の小径を抜けたところの大河内山荘庭園も散策してきたよ。庭自体もさることながら、眺めもよかった」 「小倉山のうえにありますからね」 「カタツムリ発見!!」 「庭や眺めは!?」

カグヤのヨスガ ー 出番ですよ! カグヤ様 3

『出番ですよ! カグヤ様 3』を読んだ。残念なことにこれで完結。 あまりに唐突。善行値を貯めて月に帰るという目標は、完全に放り投げられている。期待より人気が出なくて、打ち切りになったんだろうか……。 今回の話もかなり詰め込まれていたよう感じる。もしかしてもともと桃花編とカグヤ編という別の話として構想されていたんじゃないかと想像する。 未完のまま放置されるよりはベターではあるけれど、全3巻は寂しいなあ。

去らない老兵 - もう過去はいらない

『もう過去はいらない」を読んだ。本作は 『もう年はとれない』の続編。 前作よりバックにすんなり入れ込めた。主な理由は2つ。まず、バックが前作の印象よりずっと嫌な奴になっていたこと。もう一つは、同年代のライバルが登場したこと。 前作ではひたすら苛烈に見えたバックだったけれど、ときには妥協していて、年経たことで変わっていると伺いしれた。 また、同年代の老獪なライバルが登場したことによって、俺TUEEEEという印象が払しょくされた。 おかげで緊張感を保って読み進めることができた。相変わらず説教臭いのが玉に瑕ではあるけれど。

ever silver - もう年はとれない

『もう年はとれない』を読んだ。 主人公バック・シャッツのキャラクタが特徴的。肉体的には老衰しているにも関わらず、精神的にはタフなこと。そこが本作の魅力であり、同時に違和感でもある。 エンタメ小説としては楽しめたけれど、いまいちのめりこめなかった。 映画『グラン・トリノ』 のせいだろう。ダーティハリーを演じたクリント・イーストウッドが、ダーティハリーのやり方を否定して見せている。バックはその真逆をいき、ダーティハリーの路線を貫いている。 そのせいで、まだまだ俺TUEEEEできると思っている高齢者予備軍をターゲットにしているのだろうというあざとさが鼻につく (錯覚かもしれないけれど)。 って頭では考えていても俺TUEEEEって、気持ちいいよなぁ。

ネタとデータのθ - フルチャージ!! 家電ちゃん (2)

『フルチャージ!! 家電ちゃん (2)』を読んだ。 1巻に続いて安定のおもしろさ。 Jump+の連載 でも読んでいるけれど、また笑わせてもらった。 今回の表紙はケイことK9Mk2。家電と自己認識していて家電を使わないアイとは違って、家電も使うロボット。アイがネタ要員過ぎて、ケイの方がヒロインっぽいのは内緒だ。

同工歪曲 - 終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #01

『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #01』を読んだ。あとがきによると前シリーズ『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』のラストから5年。 小さかった黄金妖精 (レプラカーン) が成長していて微笑ましい。ただ、それは同時に遺跡兵器 (ダグ・ウェポン) に適合するようになることを意味しているので複雑。 でも、彼女達が悲劇的な生まれなのは前シリーズで明かされていたこと。本シリーズを引っ張るのは、彼女達を監督――前シリーズにおけるヴィレムのポジションのフェオドールの方に見える。 彼の歪みが黄金妖精を結果的に幸せに向かわせたりするんだろうか。

終末の憂鬱 - 終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #05

『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #05』を読んだ。これにて完結。けれど間髪を入れず続編『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』が始まっている。 クトリはもう少しだけ報われて欲しかったなぁ……。本巻では彼女の影がすっかり薄れてしまっている。どうにもやるせない。 この方が物語として美しいのだろう。頭では分かっていても、そう思わずにはいられない。

本職が服飾 - カエアンの聖衣

SF小説『カエアンの聖衣』を読んだ。 アニメ『キル・ラキル』につながっているらしいと聞いて。つながり方については、構成・脚本の方による解説を参照して欲しい。 読んで納得。表面的な類似もあるけれど、それ以上に、縦糸を通しながらも、各エピソードではケレンの効いたアイディアを使い捨てていくスタイルがよく似ている。 思い切りのよさ〈レンズマン〉シリーズを連想させる。あるいは縦糸の強烈さから 『ざるそば (かわいい)』 とか。あとちらっと映画 『キングスマン』 も。

望外の展開、語り部至りて - 天涯の砦

SF小説『天涯の砦』を読んだ。 パニック映画のような展開。事故に見舞われた軌道ステーションが舞台。さらに言えば、千切れて宇宙を彷徨うことなったその一画が舞台。 極限状態に置かれた各人の心理描写に引き込まれる。誰もが綺麗まっさらじゃないから、緊張感が途切れない。中でも、大島功という少年が複数の意味で痛々しい。どんどん抉ってくる。逆に、医者の田窪は第一印象をいい意味で裏切ってくれた。 こういうサブキャラクタがいる作品が好きだ。主人公はどうしたって主人公主人公せざるを得ない。予想だにしない顔を見せて驚かせてくれるのは、いつだってサブキャラクタ達だ。

ネズミのニーズ - マルドゥック・アノニマス 1

『マルドゥック・アノニマス 1』を読んだ。『マルドゥック・スクランブル』、『マルドゥック・ヴェロシティ』から短篇集『マルドゥック・フラグメンツ』を挟んでの本作。 初っ端からウフコックの悲劇的な最期が予告されていて、辛い。読み進めるにつれて、彼が破滅に至った足跡を辿っていることがどんどん確実になっていく。予告されている結末が覆ればいいのに、と願う。 バロットが巻き込まれてはいないのが、辛うじての救い。絡んできた方が盛り上がるだろうという思いもあるけれど、その思いに後ろ暗さを感じてしまう。それだけ、バロットやウフコックに入れ込んでいるということか。こうして感想を書くまで自覚していなかったけれど。 どんな形になるにせよ結末を待つつもりだけれど、ウフコックは何かの形で報われて欲しい。

鍵は - Kookey

『クーキー (原題 "Kookey")』を観てきた。 主人公のクーキーこそぬいぐるみ然としていてかわいらしいけれど、その他の登場人物はクリーチャー然としていてなかなかフリーキー。 さらに意外なことにアクションが派手。不思議なキャラクタが、ブリキでできた車に乗って、カーチェイスを繰り広げたりする。 スピードが出ると雪が降り出すのは謎だけれど、映像が幻想的できっと思いついたからやらずにはいられなかったんだろうな、と想像する。 いいぞ、もっとやれ!!

狼煙の呪い - シンドバッドの冒険9

『シンドバッドの冒険9』を読んだ。 前巻でついに危機らしい危機に陥ったシンドバッド。この巻で、マスルールの姿を見て立ち直る。 反撃の手段が、選択肢がなかっただろうとは言え、だんだんと黒くなってきた。 彼はどんな世界を目指すのだろうか。

街灯は動かない - スポットライト 世紀のスクープ

『スポットライト 世紀のスクープ (原題 "Spotlight")』を観た。 地方紙『ボストン・グローブ』の1コーナー『スポットライト』の記者が、カトリック司祭による性的虐待が巨大なシステマチックな犯罪だと暴く過程を描いている。 これが実話に基づいているというのが、空恐ろしくもあり心強くもある。そして、少し想像を巡らすと暗澹たる気持ちになる。 空恐ろしいのは、この犯罪が巨大で強大なシステムによって表沙汰にならないようにコントロールされていたこと。 心強いのは、報道の可能性が垣間見えたこと。事実を明るみに出すことの威力が垣間見える。 それでも暗澹たる気持ちが拭いされないのは、本作に描かれている調査報道がどんどん下火になっているとしばしば耳にするから。 先日読んだ『1984』や『動物農場』の著者ジョージ・オーウェルの言葉か定かではない [1] けれど、 ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない。 そもそもの発表を疑うシステムがないと、大本営発表をいくら批評したって、現実の問題を解決するとは思えない。 明るみに出ている情報を吟味するだけでなく、公開されてはいるもののあの手この手で公開コストが吊り上げられている情報を取りに行くのも、重要なんだろうなぁ。 [1] ざっとググった程度だけれど引用元が見つからないし、拙い英語力を振り絞ってで検索したみたけれど Wikiquoteでも結論が出ていないみたい (事実を追うのが調査報道なんだろうけれど、こうして調べて見るとコストの高いこと!!)。なお、英語では、 Journalism is printing what someone else does not want printed: everything else is public relations.

不死身vs不敗 - ゴールデンカムイ6

『ゴールデンカムイ6』を読んだ。 前半は札幌新世界ホテルを舞台とした大立回り。不敗の牛山が、不死身の杉元に負けず劣らずの生存力を発揮している。そのアンストッパブルっぷりが、ターミネーターを連想させる。 後半は茨戸での西部劇。舞台は北海道だけれど、展開が完全に西部劇。相争う2つの勢力にそれぞれ土方・永倉と尾形が用心棒として雇われ、人質をを巡って決闘する。 総じてこの巻は、杉元達以外の魅力が描かれていた。杉元が最も影が薄かったんじゃなかろうか。アシㇼパさんは相変わらず要所を押さえてくるし、白石はお笑い要員でありながら抜け目ないし。

who uses? - 迷惑をかけないExcel

『迷惑をかけないExcel』を読んだ。ここのところExcelを触ることが多いので (残念なことに)。 言っていることは合理的。ポイントは次の2つ。これらのポイントを押さえておけば、再利用性や保守性を高くすることができる。 入力と処理と出力に分けて考える。 機能と関数とVBAを使い分ける。 自分には「Excelブックをソフトウェアとして設計せよ」と言っているように聞こえる。 Excelファイルにはストレスを感じることが多いけれど、こうして改めてExcelに向き合ってみると、エンドユーザコンピューティングの環境としてよくできていると感じる。 ユーザの問題の方が大きいよなぁ。自分には合理的に聞こえる本書の主張も、ほとんど手を動かさないで最終的な見映え (自転車置き場の屋根の色) しか気にしない人には、訴えるところはないだろう。 どうしたもんだか。