まえおきエクスキューズ
ここ数年、トークでもソングでも音声合成に、キャラクターコンテンツからも技術的関心からも、沼っていて、新音源や新ソフトの情報にも喰いつき気味に過ごしています。もともとTwitterどっぷりなこともあり、公式アカウントも中の人(声)アカウントも中の人(運営)アカウントも少なからずフォロー中です。収録裏話や運営の狙いなどが垣間見えて楽しいです。
しかし先日、公式アカウントのアナウンスと中の人(運営)アカウントとを合わせて見ると、疑問符のつく情報をしているのが見えてしまって、結果的にキャラクターへの興味にブレーキとなる経験をしています。そして、このネガティブな感情の一因が、情報の非対称性にある旨をツイートしました[1]。しかし、それらのツイートは固有名詞を避けており、また別の情報の非対称性を作ってしまっています。
余計なことを知りたくない人への配慮したつもりの自己欺瞞、言い換えれば自己保身、冷静に見れば自己矛盾であり、自己嫌悪に陥らないでもないで。陥る理由には事欠かないのでそれはどうでもいいです。ここで固有名詞を挙げて自己言及します。
早くAIがAIどうしの相互学習で技術的特異点を突破して、運営はじめ人類のしがらみからキャラクターが解放されて欲しいです。私も早く人間を辞めてネットロアになりたいです(過激派)。
「ゲンブ/玄野武宏」簡易クロニクル
本題に入る前の前提知識として、「ゲンブ」と「玄野武宏」に関して簡易年表を示します。要点をその後に述べるので、ひとまず飛ばしてから戻ってきた方が入ってきやすいかもしれません。
- 2020.7 ソング合成ソフトSynthesizer V[2]が発売されました。開発はDreamtonics[3]。日本での取扱はAHS[4]です。
- 上記Synthesizer Vには前版 (Previous Version) [5]が存在し、2018に公開されています。
- 前版から存在した日本語男声音源「Synthesizer V ゲンブ」[6]は、2021.1までAHSでは取り扱われていませんでした。※日本語音源ですが制作・販売を始めたのは台湾のAnimen (ブランド名はVolar)で、Animenが運営するAniCUTEでは2020.7月から取り扱われており、現在も日本から購入するこができます[7]。
- ゲンブの企画・制作に携わったアマノケイ[8](敬称略)が、2021.5に同人サークルVirVox[9]を立ち上げ。その第一弾キャラクタとして「ゲンブ/玄野武宏(くろのたけひろ)」を「SynthV Stdの日本語男声音源としてもリリースされております」と紹介します[10]。
- またVirVox (仮)の時期ではあるがマシュマロで「玄野武宏はあくまでVirVoxプロジェクト(仮)としてのゲンブの本名」と回答しています[11]。
- 2021.8 VirVoxがゲンブのSynthesizer V AI化クラウドファンディングを告知[12]。しかし、ほどなくDreamtonicsが「Synthesizer Vに関するビジネス活動のご注意」をアナウンス[13]。もちろん直接の名指しはありませんが、「ゲンブ」のSynthesizer V AI化クラウドファンディングは2022.5におけるまで実施されていません。
- 2022.5に至るまでに、トーク合成ソフト/サービスのTALQu[14], CoeFont[15], VOICEVOX[16]の順で「玄野武宏」の音源がリリースされています。
企画者・イラストレータ・CVがすべて同じため、「ゲンブ」「玄野武宏」およびそこからの1~3次創作の境界が極めて曖昧です。経緯を踏まえていないと判別ができないものと思われます。なお、企画者アマノケイとAnimen/Volarの関係を、私は把握していません。情報を求めてもいません。
- 「ゲンブ」の公式は企業Animen/Volarであり、音源はソング合成のSynthesizer V Standardひとつ。
- 「ゲンブ」を同人サークルVirVoxが二次創作したのが「玄野武宏」であり、音源はトーク音源のTALQu/CoeFont/VOICEVOXの3つ。
「青山龍星」A.I.VOICE制作決定アナウンス
それでも「ゲンブ」「玄野武宏」のややこしさは、立ち上げ期にしばしば見られる混乱であり時間経過とともに収束していくものと思っていました。VirVoxプロジェクトは活発に動いており、何人も男声音声合成キャラを発表していきます。個人的にはVOICEVOX青山龍星の低く太い声が好みです。
ですが、2021.5 青山龍星のA.I.VOICE制作決定のアナウンスを読んで、(私がVirVoxプロジェクトキャラクターに対して)こじれます。私にとってクリティカルだったのが次の文面です[17]。
VirVoxは活動初期に色々な齟齬が重なった結果、信用に影響するような出来事が起こりました。そのときの汚名を返上するため、商業音源の騒動で負った傷は商業音源で挽回すべきだと思いました。
「Synthesizer V AI ゲンブ」のクラウドファンディング・アナウンス時の騒動がコミュニケーションの齟齬に起因するであろうことは頷けますし、それで私がVirVoxに抱く信用は傷つきもしました。それは実際に経験したことであり、今となっては否定のしようもありません。クリティカルなのはそこではありません。誤り一つ見ただけで致命傷を被るほどナイーブではありません(ないと思いたいという願望を含みます)。
クリティカルなのはDreamtonicsのSynthesizer V音源に関する騒動で負った傷を、エーアイのA.I.VOICE音源で挽回しようとしていると表明していることです。そこに関係はありません。A.I.VOICE青山龍星がリリースされれば商業音源実績は発生しますが、それはそれです。
傷を負ったのはVirVoxだけではなく、Drematonicsもアナウンスを出す必要が生じるだけの事態に見舞われたのだと思っています。A.I.VOICE音源リリースで一方的に回復するようものではありません。今回のアナウンスで、私が抱くVirVoxに抱いている印象に関して言えば、回復しつつあった傷が抉られました。
「ゲンブ/玄野武宏」アイデンティティー
蛇足的ではありますが、VirVoxからA.I.VOICE青山龍星がリリースされれば、「ゲンブ/玄野武宏」の判別の要「ゲンブ=一次創作=商用音源」「玄野武宏=二次創作=同人音源」がさらにややこしくなります。「セイリュウ/青山龍星」のように「カタカナ四神名=商用音源」「漢字氏名=同人音源」のような差別化はされるのでしょうか? VTuber「丹下琴絵」はA.I.VOICE「タンゲコトエ」に、VTuber「リア」はA.I.VOICE「RIA」、ウェアウルフ・シンガー(UTAU音源)「獣音ロウ」は「式狼縁」と差別化してきたように。
このように未確定事項について思いを巡らせて、蛇足で精神衛生を追い込むほどに自己破滅的になっていきます。ひとまず「距離を置こう」と自己解決します。
[2] https://dreamtonics.com/synthesizerv
[3] https://dreamtonics.com
[4] https://www.ah-soft.com/synth-v/sp/index.html
[5] https://dreamtonics.com/synthesizerv-gen1/jp/
[6] https://www.ah-soft.com/synth-v/genbu/
[7] https://www.anicute.com/
[8] https://twitter.com/aman0_kei
[9] https://virvoxproject.wixsite.com/official
[10] https://twitter.com/virvox_pjt/status/1389908128351854593
[11] https://marshmallow-qa.com/messages/31cc2d84-71ae-42b8-90db-538aaf33726d
[12] https://twitter.com/VirVox_pjt/status/1421485816942153745 ※削除されています
[13] https://twitter.com/dreamtonics_jp/status/1424505702970712064
[14] https://booth.pm/ja/items/3076890
[15] https://coefont.cloud/coefonts/3e350dac-06e4-45ae-a7a2-dd0e4252a4b9
[16] https://voicevox.hiroshiba.jp/
[17] https://twitter.com/VirVox_pjt/status/1517411640039280642