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約1月前のニュースをひっくり返して情報整理(後編)

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承前

前回[1]はニュースサイトHuffPost日本版の『「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは?』(以下、記事①)[2]について書きました。

今回はHuffPost日本版『国連女性機関が『月曜日のたわわ』全面広告に抗議。「外の世界からの目を意識して」と日本事務所長』(以下、記事②)[3]について書きます。

前回と同じく、このエントリの目的も記事①、②および私の目に触れたそれらへの反応の論理的な構造を整理することです。内容についての意見はありません。

なおこのエントリは敬称略です。

ポジションとメタデータ

記事②についても、まずポジションとメタデータを確認します。掲載したのは記事①と同じHuffPost日本版。著者も同じ金春喜[4]が署名しています。

取材先は記事①と異なり、UN Women日本事務所の所長・石川雅恵[5]。ですが記事①の取材先・治部れんげ[6]もUN Women日本事務所の活動にアドバイザー・メディア戦略パートナーとして参画していることは前回確認済みです。

記事①、②だけを見ると、外部の専門家によるガイドライン違反の指摘に、UN Women日本事務所がお墨付きを与えてたのかのように読めますが、実態は両記事ともガイドライン制作サイドが一方的に違反だと述べているというものです。

記事②のメディア紹介

記事②は、UN Women日本事務所公式Twitterにツイートされ[7][8][9]、Yahoo!ニュースにも掲載されました[10]。しかし、抗議の声が巻き起こりYahoo!ニュースは24時間も経たずに削除[11]。私の目に触れたタイミングのこのあたりでした。[9]

構成上の要点

一部の固有名詞は異なりますが、記事②の構成も抽象化すれば記事①と同じです。繰り返しになるので構造の説明は省略します。

  1. 日経新聞はUN Women日本事務所の取組に参加している(事実)
  2. 『月曜日のたわわ』全面広告は取組に反している(取組サイドの主張)
  3. 日経新聞は個別の広告掲載の判断を応えていない

意味の違いを生まない固有名詞の違い

取材先が別人であることはすでに見たとおりです。この節では記事②で新しく出てくる「アンステレオタイプアライアンス (Unstereotype Alliance)」[12]について記載し、またこれにも治部れんげが携わっていることを確認します。

記事②も引用している「アンチステレオタイプアライアンス」の理念は次のとおりです。記事①で出てきた「WEPs」、「WE EMPOWER Japan」と目的を同じくしていることが読み取れます

アンステレオタイプアライアンスは、UN Women が主導する、メディアと広告によってジェンダー平等を推進し有害なステレオタイプ(固定観念)を撤廃するための世界的な取り組みです。

こちらの取組にも治部れんげはアドバイザーとして参加しています。つまり、記事①も記事②も取材先が取組サイドであり、「取組サイドが参加企業の違反を主張している」というレベルに抽象化した構成は同一です。

これらの記事が生まれた理由(推測)

記事②の以下の記述から、石川雅恵・治部れんげは自分たちが意思決定に関与(強い言葉を使えば検閲)する権利とそこから生まれる儲けを欲しているという指摘があります。[13]

利害関係のない外部の第三者を、広告の掲載をめぐる意思決定の場に含むようにしてもらいたいです。

また、UN Womenのアニュアルレポートから、本件は「UNW日本所長と関係者という立場を悪用した一種の利益相反行為」(※UNW = UN Women)と結論付けている方もいらっしゃいます[14]。なお、このような役割を果たす組織としては、以前から交易社団法人「日本広告審査機構(JARO)」[15]が存在しています。

以上を踏まえると、石川雅恵・治部れんげとHuffPost日本支部の金春喜のコネクションが気になりますが能力及ばず、このエントリでの言及はここまでとします。

UN Women日本支部(あるいは石川雅恵・治部れんげ)の主張の問題点

これについては参議院議員の山田太郎[16]が5つの論点を挙げています[17]。

  1. 公権力である国連機関が表現内容を一方的に悪だと決めつけていないか?
  2. 他者の権利利益と無関係な創作物を規制しようとしていないか?
  3. 公権力である国連機関が新聞メディアの表現内容に干渉してはいないか?
  4. 国連機関の手続が極めて不透明であり、不公正のおそれはないか?
  5. 国連機関が一方的に規約違反がある旨の好評したのではないか?

論点4「国連機関の手続が極めて不透明であり、不公正のおそれはないか?」について補足します。

まず抗議主体が曖昧です。UN Women[18]とUN Women日本事務所[19]は異なる団体であり、アンステレオタイプアライアンスも同様にUN Womenが主導するUnstreotype Alliance[20]に並行して、Women日本事務所が設立したアンステレオタイプアライアンス日本支部[21]が存在します。ステレオタイプは地域性があるでしょうから必要性は感じますが、抗議主体がUN Women日本事務所なのかUN Womenなのかは判然としません。

日経新聞の視点で見ると、抗議ルートが騙し討ち的です。アライアンスに加盟している組織に対し、アライアンス設立関係者が(記事①ではそれを伏せて)メディア(HuffPost日本支部)をとおして抗議するのでは、アライアンスの存在意義がありません。

そもそもアライアンス日本支部関係者内でさえコンセンサスが取られていません。アライアンス日本支部4人のアドバイザーの1人、原野守弘[22]が就任早々に発言禁止を命じられ、本件でも一度も助言を求められなかった旨をツイートしています[23]。

日経新聞がメディアで個別の判断について答えないことは容易に予想できるので、本件は3名がそれぞれの立場を利用して一方的に批判できる構図を作り出そうとしていたのではないか? という疑いが濃くなります。

山田太郎参議院議員の整理した論点は、それぞれ事実に基づいており妥当に感じられます。一方で、妥当でない抗議およびそれへの賛意も数多く目に入りました。最後にこれらについて、ここは記憶だよりで振り返ってみます。強い関心がない人間にとっては、妥当でない主張が飛び交う問題とは距離を置きたくなるでしょう。

「この広告はただの絵」:絵を貶めています。たとえばアバターの外見を性的搾取された経験のある中の人は、絵こそが切実な問題かもしれません。

「広告の絵だけでなく内容を見てものを言え」:広告に傷つけられた人に内容まで見て評価させることを含意しています。

「この作品は問題ではない」:問題であるという断定と水掛け論にしかなりません。

「官能小説の方が問題だった」:小説と絵は違います。「場所XでAの死体が見つかった」という文字列と、その写真とでは目に入った瞬間に感じるものが全く異なるように思います。

「社内吊広告の方が問題だった」:そうだったかもしれません。

「上記2つに限らず~の方がひどかった」:それもこれもアウトかもしれません。

「何をいまさら」:以前から適切でなかった可能性もあります。また時間経過により判断は変化し得ます。

「日経新聞が組織的にちゃんと判断した」:組織的に判断を誤る可能性もあります。

「オタクはすぐ不当な批判の的にされる」:だとしても、これが不当な批判かは別問題です。

あとがき

主張の内容に関わらず、乱暴な結論ありきの主張形式には、げんなりさせられます。問題について考える気力を根こそぎにします。問題から人を遠ざけます。切実になり得る問題を個人的欲求(金銭欲、名誉欲、権力欲、その他諸々なんであれ)達成の手段にするような行為は問題を矮小化します。

おそらく一番辛いのは声を挙げられない人だと思っています。何がどうなるとよいのか、ずっとよくわからないままです。

[1] https://mirahalibrary.blogspot.com/2022/05/1.html
[2] https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_624f8d37e4b066ecde03f5b7
[3] https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6257a5d0e4b0e97a351aa6f7
[4] https://twitter.com/chu_ni_kim
[5] https://ja-jp.facebook.com/people/石川雅恵/100025524726075/
[6] https://twitter.com/rengejibu
[7] https://twitter.com/unwomenjapan/status/1514823420814393349
[8] https://twitter.com/unwomenjapan/status/1514823884373049344
[9] https://twitter.com/unwomenjapan/status/1514824208156487682
[10] https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1514832136851058690
[11] https://news.yahoo.co.jp/pickup/6423883
[12] https://japan.unwomen.org/ja/unstereotype-alliance
[13] https://twitter.com/tsukuru_ouu/status/1515278867619278853
[14] https://togetter.com/li/1873563
[15] https://www.jaro.or.jp/
[16] https://twitter.com/yamadataro43
[17] https://taroyamada.jp/cat-movie/post-22608/
[18] https://www.unwomen.org/
[19] https://japan.unwomen.org/ja
[20] https://www.unstereotypealliance.org/en
[21] https://japan.unwomen.org/ja/unstereotype-alliance
[22] https://twitter.com/I_am_Mori
[23] https://twitter.com/I_am_Mori/status/1514991212058402838

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