「『ネット釣り師が人々を虜にする手口はこんなに凄い』を読んだよ」
「釣りでも始めるつもりですか?」
「太公望になりたくてな」
「そっちの釣りじゃないでしょ」
「そうだった。釣れるのは魚じゃなくてクマーだった」
「で、そっちの釣り師になりたいんですか?」
「ううん。個別の発言が釣りかどうかにはあまり興味がない。でも、最近いかにも釣りっぽかったり盗用っぽかったりツイートを見かけることが増えてきてさ」
「それで釣られないように読んでみた?」
「というわけでもなくて、その〈釣りっぽさ〉、〈盗用っぽさ〉ってなんなんだろうな? と思っていて」
「それでその正体を知る手がかりとして、この本を読んでみたわけですね。ようやく繋がりました」
「そうそう。釣り師の手口がその〈っぽさ〉を噛み砕くのに役に立ちそうじゃん?」
「そうですね。で、役に立ったんですか?」
「半分は。〈マクロな視点〉の方は役に立ったけれど、〈ミクロな視点〉の方は全然。それはそれで新鮮で面白かったけれど。形態素解析の話まで出てきて、そこまでするのか、と笑うしかなかった」
「何がそこまでさせるんでしょうね?」
「まえがきいわく〈自己満足〉らしいが。反対にマクロな視点の方は、自分が〈っぽさ〉として漠然ととらえていた特徴をうまく整理してもらえたように感じる」
「どんな特徴があるんですか?」
「幾つか紹介されていたけれど、自分がよく使うのは〈多くの人がシェアやリツイートしていること〉。これは正確には釣りじゃなくてデマの特徴として紹介されているのだけれど」
「ほんと、身も蓋もないですね」
「釣り師や扇動者が凌ぎを削っているだろうからね。多くの人がシェアやリツイートしているのに限れば釣り、盗用、デマの方が多いくらいなんじゃないかなぁ。想像に過ぎないけれど」
「だとしたら悲しい話ですね。人を見たら泥棒と思った方が正しい確率が高い状況にあるってことなんですから」