SF短篇集『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』を読みました。収録されているのは次の5篇。私のお気に入りは後半3作でした。
- 石川宗生「うたう蜘蛛」
- 宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
- 斜線堂有紀「一一六ニ年のlovin' life」
- 小川一水「大江戸石廓突破仕留」
- 伴名練「二〇〇〇一周目のジャンヌ」
一番のお気に入りは「大江戸石廓突破仕留」。直接描かれている以上の広がりが感じられました。本作の舞台となった場所・時間の外ではどんな物語が繰り広げられていたのかと、想像が膨らむばかりです。どストライクでした。違和感から歴史改変を予感させつつ終盤での種明かしへと至るダイナミズムには否が応でも盛り上がります。
逆に非常に美しく閉じていたのが「二〇〇〇一周目のジャンヌ」。タイトルから察せられるとおりループものです。ループものでは周回を繰り返しながら目指す世界に辿り着くのがよくあるのですが、その先入観を逆手にとった展開。ですが逆張りが目的化しておらず、ジャンヌであればこうなのだろうという十分な説得力がありました。
「一一六ニ年のlovin' life」も非常によかったです。いとエモし。改変歴史の必然性が情緒的に語られていたのが好みからズレるのですが、そこが理知的だと水を差してしまう気もします。今思えば、「歴史改変SFアンソロジー」という文脈に第一印象が引きずられ過ぎな感は否めません。