「東京都現代美術館に行こうと清澄白河で降りたら閉館を知らされた俺は」
「ライトノベルのタイトルみたいに言っても、そんな展開にはなりませんからね」
「美少女と運命的に出会ったりしないですよね、そうですよね。というわけで美少女はおろか人っ子一人写っていない清澄庭園の写真です」
「良い眺め」
「落ち着きますね」
「そりゃ、鳥も羽を休めに来るよね」
「『休みに羽を伸ばす』なんてよく言いますけれど、鳥は休んでいるとき羽を畳んでいますよね」
「言われてみればその通りだが、リアクションに困るな」
「蜻蛉はせわしない。なかなか止まってくれない」
「危ないですね。うっかり蜻蛉切に当たってしまったら、割断されてしまいます」
「蜻蛉切、うっかり当たるようなところに置いてないから……」
「蝉の声が岩に染みいる」
「この辺りは松尾芭蕉ゆかりの地なんですよね」
「うん、ここにも『古池や』で始まる俳句の秘が置いてあった。直接は関係ないらしいが。そう言えば蛙(かわず)は見かけなかったなぁ」
「どんだけカエル好きなんですか……」
「カエルはいなかったけれど、チビ亀はいたよ。和むなぁ」
「かわいいですねぇ」
「というわけで、人っ子一人写っていない清澄庭園でした。あ、ちゃんと他のお客さんもいたよ、写らないようにしただけで」
「確かに人は写っていませんでしたが、ほとんど生き物の写真だったような……庭園のじゃなくて」