『響きの科学』を読んだ。音楽の授業で、こういうものだと覚えさせられた諸々に対するモヤモヤが大量に解消した。 例えば、音階の話。どう定められたかの話が、原理と実用との間の葛藤が想像できて、面白かった。 もう一つ面白かったのが、実証で通説を覆しているところ。以前、 ヘッドホン交換と音の評価の正確性について で参照した、『錯覚の科学』に通じるものがある。 調の話は、通説が信じられているがゆえに、結果が一致してしまっている。まさに予言の自己実現。「それぞれの調には独自の気分がある」というのは思い込みで、実際に気分を変えるのは転調。それでも、多くの曲が思い込みに支配されているから、明るい曲は長調で書かれるし、悲しい曲は単調で書かれる(長調で書かれたから明るくなるわけではない。単調についても同様)。 音楽でこういうこと教えてくれたら、自分はもっと興味持っただろうな、と思う。理屈はともかく歌ったり何か演奏したりする方に興味を持つ人の方が多くて、そういう人の方が音楽を生業をすることが多いだろうから、そんな確率は低そうだけれど。 ところで、日本には表記の種類が多い。本書を読んでいる間にこれらの関係がようやくすっきりした。ドレミファソラシド (イタリア式) とCDEFGABC (アメリカ式) とハニホヘトイロハ (日本式) が対応する。だから、C Majorとハ長調は単なる直訳だと分かる。 こうして説明されると理解はできるけれど、正直、混沌としていると思う。きっと、歴史的経緯があってのことなんだろうけれど、表記が揺れ過ぎだろう、と思う。「ド長調」でいいじゃん、と。