短篇集『日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙』を読んだ。どれもおもしろかったのだけれど、一番他作品も読みたいと思ったのは「G線上のアリア」(高野史緒)。
「G線上のアリア」はでいわゆる歴史改変SFで、電話が存在する171X年(18世紀)ヨーロッパを舞台にしている(実際に電話が普及したのは19世紀半ば)。史実で電話網はインターネットに繋がっていくけれど、この後この世界はでどのように発展していくのだろう? といつまでも妄想を掻き立ててくれる。
編者の著者紹介によると、長篇『カント・アンジェリコ』の後日談でもあるとのこと。というわけでさっそく『カント・アンジェリコ』も読んでみた。「G線上のアリア」でネタが分かってしまっているにも関わらず、おもしろいのなんの。どっぷり嵌って読み耽ってしまった。
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ところで、両作品とも〈去勢歌手(カストラート)〉が重要な役割を担っているのだけれど、『日本SFの臨界点[怪奇篇] ちまみれ家族』で冒頭を配置されている「DECO-CHIN」(中島らも)も身体的特徴と音楽が鍵になっている。第一印象はまったく異なるのだけれど、こうして同時に思い返していると、思考が内側に向いていく。これらの第一印象をまったく異なるものにした評価基準をたどり直そうとしていく。そして迷子になって途方に暮れている。
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デビュー作『ムジカ・マキーナ』や短篇集『ヴェネツィアの恋人』にも手を出してみようか。『翼竜館の宝石商人』もおもしろそうだ。